課題の分離とは【アドラー心理学4つの特徴】人間関係の悩みを改善

課題の分離とは 心理

事上の上司や部下、同僚の態度にモヤモヤする。子供がいうことをきかずイライラする。

だれもが経験する人間関係の悩み。アドラー心理学の「課題の分離」は、このような悩みから楽になるひとつのヒントになります。

アドラーが説く課題の分離。その真意とは?

アドラー心理学のキーワードを解説していきます。なかでも重要な柱「課題の分離」に焦点をあてて、わかりやすくお伝えしていきましょう。

アドラー心理学から学べること

アドラー心理学から学べること

アドラー心理学は劣等感の心理学といわれますが、劣等感そのものではなく、劣等感を克服する人間の目的・調和に焦点をあてています。

生まれ育った環境の影響を認めつつ、みずから態度を決定して人生を切り開いていく人間の可能性をアドラーはみているのです。

アドラーの説くキーワードから、アドラー心理学で学べることをみていきましょう。

1.勇気づけ

アドラー心理学の「勇気づけ」とは、褒めて褒められるような関係ではなく「共感」のニュアンスに近いもの。

褒める行為は、一般的にはポジティブにとらえられます。しかし、対人的に「評価」をあたえる従属・支配的な関係ともいえるでしょう。

「よくやった」などの声かけ。上司と部下、親子などの関係が典型ですが、おおむねタテ関係のほめ言葉ですね。

これに対し「あなたががんばった結果だね」のほめ言葉。あくまで相手目線に寄り添った「共感」に近い言葉です。信頼によりつながるヨコの関係であることがわかるでしょう。

「共感を示す」のは、後述する「課題の分離」にも通じており、人間関係をとても楽にします。

共感にもとづいた「勇気づけ」のアプローチ。複雑な人間関係にとらわれず、豊かな人生を送る考えのひとつとアドラーは説いているのです。

 

2.共同体感覚

共同体感覚とは、地域・職場・家族などの集団に対して感じる「一体感」であり、協力関係で結ばれた信頼感のようなもの。

人は元来、社会志向であり「人のために、なんらかの役に立つ」なかで喜びを得ます。社会の一員として無条件に受け入れられていると感じる。これが幸せのヒントとなります。

ただし、受け入れる場所は他人が用意するのではなく、あくまでその場所が「共同体」と感じる、あなたの意識によるもの。

「いつでも協力する準備ができている」あなた自身の心構えが、アドラーのいう共同体感覚の肝です。

一方的な「思い込み」のようですが、人と関わることで幸せになれる、ひとつの思考的なアプローチ。

アドラー心理学では、共同体感覚を獲得し、高めていく作業が子育てや心理療法などの目標とされています。

 

3.劣等感と補償

アドラー心理学の劣等感とはあくまで主観であり、あなた自身が他者より劣っている感覚のこと。アドラー自身も「人間であるとは劣等感をもつこと」と述べています。

この場合、手指が欠損しているなど生物学的な「劣等性」とは別の、あくまで主観的な劣等感に焦点をあてています。

劣等感はだれもがもつ感覚であり、それを克服しようとする原動力が生まれる点において、アドラーは劣等感を肯定的にとらえています。

劣等感の克服にむけた努力が「補償」であり、あるべき自分になろうとする人間の自然な心の動きです。

むしろアドラーは、劣等性や生まれ育った環境などを「言い訳」として劣等感をもち、課題を避けてしまう状況を「劣等コンプレックス」と名付け問題にしました。

 

4.ライフタスク

人生で直面する課題。アドラー心理学でライフタスクとしているのが「仕事・交友・愛」3つの課題です。

仕事のタスクにはあらゆる生産活動が含まれ、学業や家事育児なども仕事のひとつととらえます。ライフタスクのなかでは基本的なタスク。

仕事のライフタスクに問題を抱えている場合は、ほかの交友や愛のタスクをこなすのが難しくなるかもしれません。

交友のライフタスクは、職場や友人知人など人間関係のタスク。愛のライフタスクは、もっと高次で親密なコミュニケーション必要とするタスクであり、多くの困難をともなう場合も。恋愛や家族関係は愛のタスクです。

アドラー心理学は、これらのライフタスクを乗り越え、幸せな人生を送るためのヒントを提示しています。

 

なぜ課題の分離が必要なのか

なぜ課題の分離が必要なのか

自分でコントロールできる課題が「自分の課題」。自分でコントロールできない課題はすべて「他人の課題」です。

  • 自分の伝えたいことを話す(自分の課題)
  • 伝えたことによって相手がどう思うか(相手の課題)
  • 自分の決めた目標の達成をめざす(自分の課題)
  • 自分の行動に対する評価(他人の課題)

自分の課題だけでなく、コントロールできない相手の課題もごちゃまぜになった状況で一喜一憂するのはあなたが疲弊するだけ。

自分でコントロールできないことまで介入しても仕方がありません。

自分の課題と他人の課題を理解し、思考のなかで分離することで楽な人生を送れると考えるのがアドラーの「課題の分離」です。

1.課題の分離ができないとどうなる?

自分と相手の課題は本来は別。この分離ができていない状況で、お互いに弊害が生じます。

自信を失ったり、責任をおしつけたり、反抗的になったり。双方が依存的になる背景にも「課題の分離」が十分でない問題があります。

甘やかしたり、過干渉になったりすることで相手は自主的な問題の解決を放棄してしまうかもしれません。成長できないばかりか心に傷を負うことにもなります。

親子関係が典型ですが、「先生と生徒」「上司と部下」などでもおなじこと。

ライフタスクを果たす当事者と協力者の関係で弊害となるのが「課題の分離」ができていない場合です。

 

2.課題の分離を実践してみよう

人との結びつきが人間関係における悩みの根源。「課題の分離」を実践すると、人間関係の悩みがなくなると考えるのがアドラー心理学です。

人との関係は思いどおりにいかないことのほうが多いゆえ、人は悩みます。

自他の「課題」に線引きをして、比較対象を排除することで、いきすぎた劣等感「劣等コンプレックス」の課題にも対応できます。

孤独を感じたり、自分の容姿に悩んだり、収入が少なかったり……。

他人との比較で、自分がコントロールできない部分を背負い込むと生まれる悩み。課題の分離を実践することで気持ちが楽になります。

 

課題の分離をおこなうポイント

ひとつの困難・課題があるとき、この状態の行く末はだれが責任をとるのか。

自分? 他人? 課題の分離をするひとつの見かたです。

1.自分と他人の課題を分ける

大切なのは「自分自身がこれからどうするか」の一点です。

見えてきた自分の課題。「なんだかできそう」と思うものに集中して行動にうつします。

あなたの行動に対して他人がどう思うか。「他人の課題」に気をとられる必要はありません。

むしろあなたが「なにをすべきか」「どう評価されるか」のどちらにも気をとられているとさらに悩みは大きくなるばかりでしょう。

課題の分離をした時点で、あなたは自己分析ができています。あとは自分の人生を精一杯生きるのです。

 

2.他人の課題に介入しない

課題の分離をすると決意したあなたは、同時に他人の課題にあれこれと口出ししてはいけません。

なにかと人の行動にいろいろ意見したくなるのがSNSの時代。ただし、あまり過剰に関わるとあなた自身も苦しくなることも。

あなた自身がおこした行動で、相手が思いどおりに動かないこともあるでしょう。ただし、他者がその思いに応えるかどうかは「他人の課題」ですね。

「この人は自分で課題を解決できる」と信じきること。もちろん、必要な支援とともに共感をもって相手に接しましょう。

あわせて、最終的な決断をした「他人」を尊重して見守る姿勢を大切にします。

 

アドラーが伝える「課題の分離」の意味

アドラーが伝える「課題の分離」の意味

アドラーの考える課題の分離は、人との関わりを断つものではありません。

なにか冷たい印象をもたれるアドラー心理学「課題の分離」ですが、曲解されやすい面も。

「相手の課題には一切関わりません」「あとはあなたが全部解決すべき」とアドラーが説いているわけではありません。

むしろ相手の課題もしっかり理解しているがゆえ、相手のこともよく理解できる。困ったことは理解し合い「共同」の課題ととらえ部分的には助け合う姿勢をもつ。

この姿勢があなたの自身の幸せにつながると考えるのがアドラーの真意です。

少し極端ですが「信用と信頼」におきかえてみるとわかりやすいかもしれません。

借りたお金を返すのは、借りた本人の「課題」ですね。ここは本人の「信用」に関わる部分であり厳格です。私情によって免除になったりならなかったりはありません。

ただし、本人が返したいのに返せない困難に陥っているとき、本人に一時的にも融通する。解決のための支援をするといった「信頼」は別です。

最大限、相手の力を信じて、自分のできる範囲で支援するという姿勢は「信頼」にもとづく人としての温かい部分です。

アドラーはむしろ課題を分離することで生じる「温かみ」に価値をおいているのではないでしょうか。

アドラー心理学とは、課題を分離して共同する「義理人情」の心理学なのです。

 

アドラー心理学 まとめ

アドラー心理学で学べることや「課題の分離」に焦点をあてお伝えしてきました。

実生活で課題の分離を意識しても、すんなりとはできないかもしれません。

あなたの思考を切り替えるヒントとして、複雑な人間関係を整理する程度にとらえたほうがうまくいくでしょう。

「この仕事は自分でコントロール可能な課題か」を心がけ、分離した課題を、共同の課題ととらえなおす。

ストレスに悩むあなたの、気持ちが少しでも楽になればうれしいです。

 

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