統合失調型パーソナリティ障害とは|診断とアプローチのしかた

統合失調型パーソナリティ障害 パーソナリティ障害

統合失調型パーソナリティ障害(STPD:Schizotypal personality disorder)は、精神面で複雑な様相をしめす疾患です。

今回は、統合失調型パーソナリティ障害の本質や診断基準、症状、日常生活への影響をくわしくみていきます。

奇怪な思考や異常な信念、社会的不適応、そして対人関係の難しさをかかえるのが統合失調型パーソナリティ障害。治療方法や依存との関係などをお伝えしていきましょう。

統合失調型パーソナリティ障害の知識を備え、適切なアプローチとサポートを強化するヒントになればうれしいです。

統合失調型パーソナリティ障害とはなにか? 基本的な特徴4つ

統合失調型パーソナリティ障害とはなにか

統合失調型パーソナリティ障害は、特異的かつ奇異な特徴をもつパーソナリティ障害です。 おもな特徴を挙げてみましょう。

1.奇怪な思考と異常な信念

統合失調型パーソナリティ障害の人々は、奇妙な思考や信念をもつのが特徴。

例えば、「眼に見えないものが見える」非現実的な幻想、奇抜な信念が現れる場合があります。

迷信深いため、いわゆるオカルト的な魔術的思考、テレパシーや第六感を信じるなどのスピリチュアルに傾倒しやすいです。

 

2.社会的不適応

統合失調型パーソナリティ障害のある人は、社会的な場面での適応能力に制限があるため、他人との関係維持が難しい傾向があります。特に協調や親密な関係が求められる場面ほど、孤立や疎外感を感じやすいです。

 

3.奇抜な行動

奇妙な行動や身なり、奇抜な考え方が見られ、周囲は違和感をもつかもしれません。

状況に合わないまたは汚い服を着る、ときに徘徊を繰り返すなど奇妙な癖を有している場合もあるでしょう。

通常の社会的慣習を無視する傾向もあります。通常の社会的合図を理解せず、他者と視線をまったく合わせないなど交流が不適切であったり、変によそよそしかったりします。

 

4.感情の特異性

感情表現が特異的で、感情の適切な表現自体が難しい傾向です。

「関係念慮」を抱きやすいといわれます。なんでもない偶然の出来事に対して間違った解釈をしてしまい、他人に対して普通でない意味づけをするのが関係念慮。

出来事を現実ととらえる「関係妄想」までには至りませんが、現実的な思考とはかけ離れたり、被害的な意識をもったりしやすいです。

 

統合失調型パーソナリティ障害の診断基準

統合失調型パーソナリティ障害のおもな診断基準には、奇怪な思考や異常な信念、社会的不適応が含まれます。診断には、これらの特徴が長期間(通常は少なくとも2年以上)継続し、日常生活に支障をきたしている状況が考慮されます。

  1. 社会的・対人関係の不安: 社会的な場面での不安や、他人との関係の難しさがある。
  2. 奇抜な行動: 奇怪な行動や奇妙な身なり、言動がみられる。
  3. 感情の特異性: 感情表現が特異的で、ほかの人と比べて不適切な表現が多いこと。

これらの基準が満たされる場合、精神保健の医師および専門家は、統合失調型パーソナリティ障害の診断を考慮します。

診断の確定をみて、患者の生活の質を向上させるために適切な治療やサポートの提供が検討されます。

 

統合失調型パーソナリティ障害とほかの精神障害の違い

統合失調型パーソナリティ障害とほかの精神障害の違い

ほかの精神障害との違いは、その症状や診断基準にあります。 統合失調型パーソナリティ障害はパーソナリティ障害の一種であり、長期間にわたって特定の特徴が持続するなどが要件です。

個人のパーソナリティと対人関係に焦点をあて、奇怪な思考や異常な信念、社会的不適応が特徴であり、言語障害などの症状があり、現実感覚の歪みがみられます。

他方、「統合失調症」そのものは精神疾患のなかでも古くから臨床がすすんでいて、以前は精神分裂病といわれていました。

認知症状、幻覚、妄想などの症状が顕著であり、早期に精神科医療(おもに薬物療法)の治療介入が優先されます。

診断基準が異なり、統合失調型パーソナリティ障害の診断にはパーソナリティ障害の基準が、統合失調症の診断には精神疾患の基準を用いなければなりません。診断と治療の際には、これらの違いを理解する必要があります。

 

統合失調型パーソナリティ障害の周囲への影響

統合失調型パーソナリティ障害は、本人だけでなく周囲の人々の日常生活にもさまざまな影響をもたらします。

1.コミュニケーションの不全

統合失調型パーソナリティ障害の人々は、社交的な場面で、他人との交流を恐れてしまうため、周囲との共同作業は困難となります。コミュニケーションによる合意形成がスムーズにいかなくなり、友好的な対人関係は築きにくいです。

孤独感がさらに増大する悪循環で、いきいきとした日常を過ごせなくなります。

 

2.職場や学業への影響

社会的な不適応や奇妙な行動が、職場や学業で問題を起こす可能性があります。仕事や学業の成果をもたらすよりは、むしろ周囲の人々にマイナスの影響を与えてしまうでしょう。

統合失調型パーソナリティ障害の影響はけっして小さくないため、軽減に向けた専門的治療とサポートが必要です。

 

統合失調型パーソナリティ障害の管理と治療

統合失調型パーソナリティ障害の管理と治療

統合失調型パーソナリティ障害の治療は、症状の軽減と社会的適応の向上をめざす複合的なアプローチが必要です。以下は一般的な治療法の概要です。

1.認知行動療法 (CBT)

CBTは、奇怪な思考や異常な信念に対処し、対人関係のスキルを向上させるのに役立つでしょう。患者は自己意識を軽減し、健康的な思考や行動パターンの習得をめざします。

 

2.対人関係療法

対人関係療法は、他人との関係を強化し、信頼やコミュニケーションのスキルを向上させます。対人関係をつうじてクライエントに感情表現を促しながら、適切な表現のしかたを身につけるのが目的です。

他人との接触に対する不安を克服をするため、意図的に接触(エクスポージャー)の機会をもちます。

 

3.薬物療法

精神科への外来に結びつくかどうか。治療の重要なポイントです。

統合失調型パーソナリティ障害の症状軽減のため、抗精神病薬や抗不安薬などの薬物が処方されることがあります。

 

4.グループワーク

おなじパーソナリティ障害の傾向がある人々のグループへの参加はとても有効です。経験を共有し、自身のおかれた状態を客観的に認識できます。

治療計画は個々のクライエントに合わせて体系化されます。精神科医との協力も必要になるでしょう。

統合失調型パーソナリティ障害のある人々は、専門的なサポートを受けながら、日常生活でより健康的で満足度の高い生活を築く思考やスキルを身につけます。

 

統合失調型パーソナリティ障害との共存疾患に対するアプローチ

統合失調型パーソナリティ障害の患者は、ほかの精神障害との共存が一般的です。 共存する疾患の適切な管理が、症状の軽減と生活向上のポイントとなります。

1.統合失調症

統合失調型パーソナリティ障害と統合失調症は似たような症状があるため、正確な診断が重要です。両方の障害に対処するために、薬物療法と心理療法の組み合わせが役に立ちます。

 

2.抑うつ障害や不安障害

これらの疾患との共存は一般的です。抗うつ薬や抗不安薬、認知行動療法などを活用して、症状の緩和と心理的な支援を提供します。

 

3.薬物乱用

アルコールや薬物乱用との共存が問題となるケースがあります。精神保健専門家の指導のもと、まずは薬物依存を克服し、健康な生活を取り戻すサポートが必要です。

 

適切な評価と個別化された治療

それぞれクライエントの状態は異なるため、疾患に対するアプローチは個別化されるべきでしょう。 専門家は、患者の特定のニーズに合わせて適切な評価と治療計画を立てます。

統合失調型パーソナリティ障害との共存疾患への対応は複雑であり、より専門的なサポートが必要になるでしょう。

総合的な治療アプローチを追求し、患者の症状と生活の質を改善するためのサポートが大切です。

 

統合失調型パーソナリティ障害まとめ

統合失調型パーソナリティ障害は奇怪な思考や社会的不適応が特徴で、認知行動療法や対人関係療法が有効な治療法です。

共存疾患への対処も重要で、統合失調症、うつ障害、不安障害、薬物依存などとの共存がある場合、個別化されたアプローチが必要。

適切なサポートを受けられるよう、症状の軽減や対応の参考になればうれしいです。

 

【お問い合わせ】

自己洞察瞑想療法(SIMT: Self Insight Meditation Therapy)

Post by @moto.mako
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