ヒューリスティックとは|3つの分類|意思決定をするときの思考心理

ヒューリスティックとは 心理

ぜかわからないけど、ひとまずこう判断してみた……。

意思決定をするときには、心理学でいうヒューリスティック的な思考・手法をもちいるときがあります。

経験則や先入観から、問題の解決をはかるケースは日常的にあることですね。ただし、ときに判断を間違うこともあるのがヒューリスティック。

偏見による深刻な判断ミスをしないためにも、無意識につかっているヒューリスティックを知っておくことはとてもよいことではないでしょうか。

今回はヒューリスティックとはなにか、デメリットを自覚するには? 仕事での活用法などをお伝えしていきます。

日常に潜むヒューリスティックとは

日常に潜むヒューリスティックとは

ヒューリスティック(heuristic)とはギリシャ語の“見つけた!” の意味であるEureka(ユーレカまたはエウレカ)が語源。

不完全であるが、ひとまず単純な答えをみつけるための思考のこと。行動経済学者のダニエル・カーネマンらが提唱しました。

3つに分類されるヒューリスティックとはなにかをお伝えしていきます。

  • 代表性ヒューリスティック
  • 利用可能性ヒューリスティック
  • アンカリングと調整ヒューリスティック

1.代表性ヒューリスティック

自分の頭のなかにある固定観念をもとに、わからないことをひとまず理解しようとする手段・思考法が代表性ヒューリスティック。人間の無意識な心の動きです。

思考回路を簡略化することで、すみやかな判断ができますが、偏見におちいりやすいともいえます。

「外国の人みんなは英語がしゃべれそう」と考えがち。でもその人は、かならずしも英語圏の人とはかぎりません。

バイクに座ってたばこを吸っている人=不良といった見かた。典型的なステレオタイプですが、かならずしも正しいとはいえないですよね。差別にもつながりやすい思考ともいえます。

代表性ヒューリスティックとは、このステレオタイプな思考や思い込みから、ひとまずものごとを判断しようとする「簡略化思考」のことです。

 

2.利用可能性ヒューリスティック

身近にある情報、すぐに取りだせる記憶をもとに判断する思考が利用可能性ヒューリスティック。

日常的にふれている情報は、頭のなかで検索しやすい情報であるため、判断基準にされやすい傾向にあります。

下記のなかで、日本において数が多い順に並べてみてください。

  • コンビニ
  • 美容室
  • 歯科医院

利用する人の数や頻度が圧倒的なのはコンビニであるため、コンビニが一番多いのでは? と考えた人が多いのではないでしょうか。

実際の数では、美容室、歯科医院、コンビニの順が正解です。美容室はコンビニの4倍はあるといわれています。

自分の経験や頻度で優先がかわり、判断思考のショートカットがおこりうるのが利用可能性ヒューリスティックなのです。

 

3.アンカリングと調整のヒューリスティック

最初に得た情報が固着し、その後の判断・推測に影響をおよぼす思考がアンカリングと調整のヒューリスティック。

固着するさまを、船を係留するアンカーにたとえています。

「調整」とは、最初の情報を基準に設定して、思考をアジャストするという意味。

最初に提示された情報が強く印象に残るため、価値判断や意思決定を左右することも。「第一印象が大事」といわれるゆえんでもあります。

洋服を買いにいったとき、定価でうられている洋服Aと値引きされて、Aとおなじ値段で売られている洋服Bとではどちらに価値をおくでしょうか。

もともと高くて上等なものかもしれない洋服Bを選択する人が多いかもしれません。本当に価値があるかどうか、わからないにもかかわらずです。

意図的に高い価格設定をして、値引きすることで「安い」という印象操作にもちいられる場合もあるでしょう。

あえてキャッチーな情報をはじめに植えつけることで、価値判断や意図的な印象操作をするのが、アンカリングと調整のヒューリスティックなのです。

 

ヒューリスティックが起こる理由

ヒューリスティックが起こる理由

ヒューリスティックが起こるのは、脳がもつ負荷を軽くする機能がはたらくためです。

ふだん私たちの脳は、思考のために膨大なエネルギーをつかっています。まずは複雑な思考回路をつかわずに、簡易的かつ経験則的にものごとの解決ができれば……という脳の自然なはたらき。

より正確な対応が必要となれば、脳のエネルギーをつかうことにもなりますが、ひとまずは自動化して正しく対処できれば十分なのです。

より複雑な問題に対処する余裕にもなるため、行動経済学的にもメリットが大きいのがヒューリスティック。

間違いも往々にあるのですが、その経験も次のヒューリスティックに活かされるわけです

 

ヒューリスティックを自覚する

ヒューリスティックを自覚する

すばやく意思決定できるメリットがある一方、判断ミスをする可能性があるデメリットもあるヒューリスティック。

ヒューリスティックを自覚し、デメリットを回避する3つの方法をお伝えします。

1.偏った先入観をもたない

問題の解決や目的の達成にむけて、強い先入観はもたないこと。思考をニュートラルにたもちましょう。

偏ったポジティブ・ネガティブ思考が、適切な行動を妨げてしまうためです。

希望の学校に合格するイメージをあまり強くもちすぎてしまうと、勉強がおろそかになりがち。いまの実力を冷静に自覚して、勉強の計画をたててみるのです。

前回のプレゼンテーションが失敗したイメージ。今回もどうせダメだろうと考えてしまうかも。ただし、前回ダメだった理由を冷静に分析してみると、意外に自分だけの問題ではないこともあるでしょう。

自分の「思い込み」と行動の関係に、ヒューリスティックがあることを自覚するのです。

 

2.こまめな情報収集

なんとなく見聞きする情報だけでなく、視野を広げて意識的に情報収集をしてみましょう。

直感だけの判断では、ときに騙されてしまったり、不利益をこうむったりする可能性もあるためです。

連日報道されているコロナウイルス感染症。自分のまわりには感染者はいないし、ちょっと旅行にいってみようか。

旅行はよいのですが、行った先の感染状況や対処法など、しっかりとリサーチしておくことが大切です。

自分の身近な情報だけで判断しないという心構えが、ヒューリスティックのデメリットからあなたを守ります。

 

3.ステレオタイプにはまらない

自分の心にある「決めつけ」を自覚する。

ステレオタイプとは、ヒューリスティックな思考の根幹となる部分。まずは「○○するみたいな」のが当たり前と思っている自分の思考をよく見なおすとよいのです。

外国人が困っているようだが、自分は英語が話せないし……。

ちょっとまって。相手は英語を話すとはかぎりません。ひとまず日本語でも身振り手振りでも、コミュニケーションがとれる可能性を考えてみましょう。

ヒューリスティックにひそむステレオタイプ的な思考は、ときに偏見を生みだすのです。

 

ヒューリスティックをマーケティングに活かす

ヒューリスティックをマーケティングに活かす

ヒューリスティックのポジティブな面を活用することで、ビジネスには有用となるでしょう。

さまざまなマーケティングで利用できるのがヒューリスティックであるため、消費の本質を分析する手がかりとなります。

商品パッケージの色彩は消費行動に大きな影響をもたらすことも。

「水色」はさわやかでクールな印象。デオドラントや清涼飲料水の商品にもちいてみる。健康食品には、自然をイメージした「緑」をつかってみるなど。色彩がもたらす心理的効果もヒューリスティックのひとつといえます。

あえて先にネガティブな情報を与えるヒューリスティック手法も。

不安な状況で「これさえあれば問題解決!」などのキャッチコピーをしめします。

あまり消費者に不安をあおるのはよくありませんが、商品の適正な価値を伝える有効な方法のひとつです。

 

ヒューリスティックまとめ

ヒューリスティックについて3つの分類とメリット・デメリット、活用法などお伝えしてきました。

  • ステレオタイプ的な思考を判断基準として、簡略的にものごとに対処していこうとするのが代表性ヒューリスティック。
  • 自分の身近な経験や記憶をもとに、優先がかわってくる思考が利用可能性ヒューリスティック。
  • 商品の値段や価値など、最初にうけたイメージが基準となり、のちの判断に影響をあたえるのがアンカリングと調整ヒューリスティック。

いずれもあなたが日常で判断基準としているかもしれない思考。ヒューリスティックを知り、うまく活用することで、あなたの仕事や生活がよりよいものになればうれしいです!

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